「手包み工房 楽仙樓」
2021年、念願の工房兼テイクアウト専門店「手包み工房 楽仙樓」がオープン。コロナ禍の影響をまだ引きずっていた時期ではありあましたが、念願の工房をもったことで、楽仙樓は未来に向かって、新たなスタートを切りました。
それは、表から見えることにとどまらず、時間とお金をかけてこだわった、工房のスペース拡大と新しい設備によるところが大きかったといえます。力を入れ始めていたテイクアウトの水餃子に加えて、中華丼、ワンタン麺、肉まん、あんまんなど、一気にメニューを増やしました。特に、急速冷凍ができる大型冷凍庫の導入により、多くの餃子をつくりたての状態で保存することができるようになったので、通販のための各種セットや、既存のセロリ餃子の皮にセロリの絞り汁を皮に練り込み、うすい緑色をした餃子にグレードアップしたりしました。ちょっと特別感がありますし、ほんのりセロリの香りが漂う、今では人気商品となっています。
同時に、73歳になった母は毎日料理をつくることが体力的に難しくなってきたのも事実でした。そこで週に2日、餃子づくりをする日にだけ出勤し、スタッフと一緒に1日2000個をつくるようになりました。具材をカットしたり混ぜたりするのは機械で行いますが、餃子の皮を伸ばし、包むのは人の手でしかできません。午前中にスタッフが餃子の餡と皮の仕込みをしておき、午後2時半くらいから母を筆頭にスタッフ(日によって異なりますが、8人ほど)が集まって一斉に包み始めます。その様子を見た人は、あまりの手の早さに驚きますが、これが母がずっとやってきて体に染み込んだスピードです。そうやって、午後5時には2000個を仕上げます。
餃子作りの様子
ここで、新しく導入した大型の急速冷凍庫が頼りになります。餃子の皮はすぐに乾きやすく、乾くと破れやすくなるのが特徴です。急速冷凍庫でも風量が強すぎると餃子にヒビが入ってしまうということを、かつて経験してきたので、工房のリニューアル時には、風量調節ができるものをこだわって導入しました。業務用の大きな急速冷凍庫は驚くほど値段が張りますが、これだけは妥協できませんでした。コロナの影響による助成金を厨房設備に使うことはできないので、また別に借入れをすることになったのは、予定外でしたが…。
SEO対策、SNSの強化
店内だけでなく、テイクアウトや通信販売も順調に伸びていきましたが、それまでの借入れを返済していくことを考えると、いつもギリギリの状態です。銀行への返済の一部は、2年ほど先に延ばしてもらい、とにかくコロナ禍で落ち込んだ売り上げをリカバーし、足元のビジネスを固めることに注力しました。
新しい商品や商流は少しずつ増えていきましたが、また別の新しいことを始めないといけないということを感じていました。それが、WebサイトとSNSの活用でした。コロナ禍で時間ができたときから少しずつ始め、Googleやekitan、そのほかグルメサイトへの情報登録は、自分なりに勉強しながら充実させていきました。お客様やこれからお客様になる方が検索したときに、求める情報がすぐ得られるように、そして感染対策や衛生管理などに安心して来店してもらえるように。さらには、楽仙樓のホームページにはお店の歴史や餃子づくりのこだわりなども載せて、ファンになってもらう工夫も重ねました。インスタを開設してその日のランチメニューを発信したり、公式LINEアカウントも始めました。
ただ、このあたりまではあくまでも私の独学で自分なりのやり方です。これから先は、しっかりとマーケティング理論にのっとった、次のステップが必要になると感じていました。そこで、DMMチャットブースト(公式LINEアカウント運営のサービス)をとおして、マーケティングの知識を強化するプログラムに参加することにしました。仕事は忙しさを取り戻していたけど、オンラインで受講できるし、その後も必要なら仲間とチャットでやりとりできたり、最新情報をキャッチアップすることもできます。…と今になってみれば、そういうことになりますが、そのときは「どんなんかわからへんけど、とにかくやってみよう」という気持ちでした。